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【2024/05/17 21:55 】 |
今にも泣きそうな恐怖の目
まず、小娘に対してだ。
ぽかーんとしていたかと思えば
いきなりすごい剣幕で怒りだす。
まったく最近の子供にはついていけねーや。

次は、あの白着物のガキに対してだ。
怪しげな呪文を唱え、
儀式まがいの遊びをしていた訳ではないらしい。
その背後の巨大な影がその証拠だ。

しかし、突然オレのイライラはふっ飛んだ。

ずっしいいいいいいいいいんっ!
地震のような音が響く。
見たところ
白着物のガキの背後で
あの影が地面に倒れたようだ。

広場の蝋燭に照らされて影の正体が見えてきた。

その影の姿は人間だった。
今は地面にうずくまった格好をしている。
周囲の木立と同じぐらいの背丈だが、
確かにその姿は人間だ。
ただしコイツは明らかに人間じゃない。
体の大きさもそうだが、その頭部が、そいつの正体を主張している。
その頭にあるのは…一対の角。アニメ 抱き枕

鬼だ。
コイツの正体は巨大な鬼だ。

鬼の体は、筋肉が盛り上がってごつごつしている。
まるで岩をつなげて作ってあるみたいだ。
指の先の爪は槍のようだ。

「何してんの、君たち。騒がしいんだけど」
場違いなほど落ち着いた声。
白着物のガキだ。
その顔は、無理に笑いをこらえているように歪んでいた。

…まったくブキミなガキだ。

影の正体が判明した時点で、
オレのイライラは完全に消えていた。
代わりにオレの中にあったのは…

…焦りだ。
何が起きているにせよ、
こんな巨大鬼やブキミなガキに関わったら
厄介なことになるのはわかりきっている。
一刻も早くこの山を脱出しなければ。

そのためにはこの小娘の力がいるのだが…

オレの隣にいる小娘は完全にビビっている。
正常に呼吸もできないほどにだ。

見るからに頼りない小娘だぜ。
まったく、こんなのにオレの脱出が掛かっていると思うと
嘆きたくなってくる。

「おい、お前」
オレは小娘をつついた。
「逃げねーと、ヤバいことになるぜ。…って聞いてんのか?」

小娘はオレの方を見ようともしない。
今にも泣きそうな恐怖の目で
広場の白着物のガキを見ている。

「も…守屋……何なのよ、それ……!」
小娘がうめくように言った。
「まるで…バケモノじゃない!!」

これがきっかけだったらしい。

「あっはははははははははははああああああああ!」
小娘に守屋と呼ばれたガキは狂ったように笑いだした。
「これでオレは、オレは……!!」
そしてまたガキは笑いだす。

唐突に、鬼が唸った。
まるで猛獣が低く唸るような声だ。
その声に大地が、木々が、山全体が震える。

「好きなだけ暴れろ!バケモノめ!!!!」
守屋と呼ばれたガキが裏返った声で叫んだ。

まるで命令に従うかのように鬼はゆっくりと起き上る。
その視線は真っ直ぐオレたちに向いている。

そんな目で見られても嬉しくねーよ!

おれはとっさに【変身の呪文】を唱えた
体が引き伸ばされて、オレはクマの姿になった。
鬼ほどデカくはない。
それでも小娘を抱えて逃げるには十分だ。

薄桜鬼 抱き枕オレは辺りの木々の間を押しのけるように走り出す。
行き先なんか考えてない。
とにかく鬼から距離をとるんだ。

どれぐらい走っただろう。
オレに後ろを振り返る余裕ができたころだ。

小娘がポツリと言った。
「あんた、私を助けてくれたの…?」

オレは辺りを素早く確認した。
よし、追手なし。

「別に親切で助けたわけじゃねーぞ」
オレは近くの茂みの影に小娘をおろす。
そうして【呪文】をつぶやいてタヌキの姿に戻った。
「言っただろ、オレはお前と取引をしに来たんだよ」

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【2011/02/12 12:36 】 | 小説
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